永遠の日本のふるさと遠野
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遠野語講座

第15回 よったぐれのわげしたず

遠野で日常的に使われている「お国言葉」をご紹介します。ぜひ声に出して、その響きのあたたかさを味わってみてください。

遠野語講座

ササキを先頭にみんなは彼のいきつけのスナックに入った すでに店内はにぎやかで、どのテーブルもよったぐればっかりになっていた、夏はどこも賑やかでいい。
もう解るね?「よったぐれ」は酔っ払いだよ。
テーブルには焼酎のセットと乾きもののつまみと、「おしんこ」つまり「おごご」が出てきてならんだ。
「まんつ、かんぱーい!」タイチの音頭で選曲とともに二次会が始まった、
「おらだずも、やっぺ、ほれだれがらだ、なんぬする?」常連のササキが仕切る
「おらだずも」が「おれたちも」だね、「やっぺ」はこのばあい「うだっこうだうべ」の意味
「ほれだれがらだ、なんぬする?」が、「おーい誰からにする、リクエストは?」だよ、
歌舞伎町のカラオケ屋で使えるね!
歌より酒の好きなタイチはここでも漬物をつまんで飲み始めていた
「じゃ、しょっぺおごごだな!」「やっぱすが、こごのおごご、しょっぺべ」
前のジンギスカン屋のは「すっぺ」だから「酸っぱい」、ここのは「しょっぺ」、つまり「塩っ辛い」だね
トーホグ地方もだいぶ減塩運動が定着したが、まだまだのところもあるようだ
「しょっぺべ」と「ぺ」と「べ」並んだり、「こごのおごご」と濁音が続いたりするから、ちゃんと使おうね。
これらがスムーズに出てくるようになれば一人前だよ。
「すっぺ」と「しょっぺ」が解った?「甘い」ときは「あめ!」って言うんだよ、「あんめ」でもいいね
腐った食べ物は「あめだ」だったね、まちがったら大変だから気をつけよう。
ようやくササキの順番が来て歌い始めた、役場で鍛えられてるだけあってなかなか上手い
「つぎおれだよな?まだが?おせなや」ケンジがイライラし始めた
「おせなや」は、解りやすいね、「遅いなー」だ、
「なんたら、ほがのテーブルもあんだがら、たんげばんこなんだでば」タイチがケンジをなだめるように言った
「そういったって、別のテーブルもあるじゃん、交代交代なんだからさ」ということだ、タイチは大人なのだった。
「んだって、さっきがらほがばりうだってらべ」ケンジはおもしろくない、
「だってさ、さっきから別の奴らばっかり歌ってるじゃん」と、言って怒ってるんだよ。
「しかたないじゃん、順番よ!」彼女もケンジをたしなめる。この順番にもタイチが言うとちゃんと「こ」がつくよ
「ちゃんと、じゅんばんこになってらっけでば!」だね、だんだん声がササキの歌声より大きくなってきた。
やっぱり奥のテーブルから誰かがやってきた
若い女の人だった、文句を言いにくるなんてなかなか勇気がある娘だ
「ちょっと、あんただず、しぇわすすちゃ、すこすすずがぬしゃべってじゃ、うだっこもきけねべ!」
長いから解るかな?問題は「ちゃ、じゃ、べ」の使い方だよ。
「ちょっとあんたたちは、うるさいわね!少し静かにしゃべってよ、歌もなんも聞こえないじゃないのよ」
って言ってるんだよ、女は男の「じぇ」の換わりに「ちゃ」も使うからね、まだやさしいんだよ、男だったら
「こりゃ、おめだずしぇわすでば、すこすすずがぬしゃべれ、うだっこもきけねじぇ、」となり、危険信号だよ。
「なんだおめ、ナオコでねが?」マイクをもったまま、ササキが叫んだ。
「ありゃ、たまげだ、ナオコだ!」タイチとケンジもびっくりして叫んだ。「たまげだ」は「びっくりした」だ。
「ほんとにしぇわすしたずだごど、やぁ、しばらぐだねケンジくん!」ナオコと呼ばれた娘が笑いながら言った
「しぇわすしたず」は「うるさいひとたち」という複数形になるからね、遠野では良く出てくるよ
若い人たちを「わげしたず」、年寄り達の「としょりだず」、女の人たちのことは「おなごだず」などなど・・・
「だれこの人?」東京から来た彼女は、タイチにそっと聞いた
「おー、ナオコってな、ケンズの高校のどぎの彼女だ!」遠慮せず大きな声でタイチが教えた
「エッ?彼女って、マジ?」ケンジは隣の彼女をこわごわ見つめた
しかし「モトカノ?ちょーうける!」いまのわげしたずは強いのだ。

[[[ 多田きんや プロフィール ]]]

1955年遠野市生まれ、千葉県在住のガーデンデザイナー・グリーンコーディネーター。本業の傍らイラストレーターとしても活動、遠野のイラストマップ、双六、カルタなども旅の蔵にて販売している。
本業のガーデニングの本、農文協の「きんや先生の園芸教室・はじめての寄せ植え」や旅と思索社「二十世紀酒場1,2」などがある。


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