「勝手に遠野大使」の愛と情熱|店主・荒田さんに聞く
扉を開けると、昔ながらの芳ばしいコーヒーの香りと、店主・荒田和子さんの朗らかな笑顔に包まれます。仙台市生まれの荒田さんが、結婚を機に遠野に移住して50年以上。この地で四半世紀、「詩季」は変わらぬ温もりを灯し続けてきました。
→『アクセサリー&cafe 詩季』の概要はこちら
旧映画館から喫茶店へ 50歳からの挑戦
現在カフェ・詩季が営まれている場所はその昔、荒田さんの義父が経営する映画館でした。映画館は1983年、惜しまれつつ閉館。その後空きテナントになってしまった義実家で「せっかくなら私がお店をやってみよう」と50歳の時に開業を決意。
当時市の商工会が募集していた50歳が限度の女性起業支援にすべり込みで申し込み、2ヶ月の研修を受けました。学生時代に仙台で叔父のコーヒー店を手伝っていた経験、遠野のアクセサリー店で10年勤めた経験を活かせる場所ということで「Cafe & アクセサリー 詩季」オープンすることにしたと言います。
その時に「カフェだけで経営するのは難しい」という壁にぶつかりました。
荒田さんは、安価にコーヒーを提供することで多くの方に来店してもらいたいと考えていましたが、商工会の講座を通じて、安価なコーヒーだけではカフェの経営を維持していくのは難しいという現実に気が付きました。
「安価なコーヒー」の信念と「雑貨店併設」の独自の経営戦略
コーヒーを値上げすれば解決しそうな問題ですが、値上げという安易な解決策を選ばず、荒田さんは信念と経営を両立させるための独自のアイデアを生み出しました。
それは、「雑貨店を併設し、お客様の滞在時間を心地よく伸ばすことで、雑貨販売による単価向上を図る」というものです。カフェだけでは儲からないし、雑貨だけでは資金繰りが難しい。そこで「コーヒーを飲んでゆっくり雑談して、目の保養に商品を眺めているうちに買いたくなる」そんな仕組みを考えました。
このアイデアを実行に移す行動力も、荒田さんらしさです。開業資金が限られる中、自ら夜行バスに乗り、東京・新宿へ雑貨の仕入れに向かいました。結果、オープンには間に合ったものの、仕入れ量が少なかったため、なんとわずか3日で在庫が完売してしまったと言います。
「あまりにも、こっそり開店して3日後に閉店。途方に暮れました。」
でも辞める訳にはいきません。再び夜行バスで仕入れに通い、10日後に再開。
「とりあえず好きなことは続けようと、季節ごとのディスプレイはちょっと頑張りました。」と当時を振り返ります。
「うちはチラシを打ったことはないの。口コミで広まったんでしょうね。」と語る荒田さん。宣伝用のチラシを一度も打たずに3日で雑貨を完売させたという事実は、荒田さんの人柄と、周りの方々との温かい信頼関係の賜物と言えるでしょう。
「遠野には同じような形態のお店がなかったため続いたのではないか」と自己分析しています。
ご本人は「私お節介なの」と自己紹介しますが、そのおもてなし精神が、たくさんのお客様に愛されたのでしょう。
「私、遠野が大好きなの」溢れる郷土愛がおもてなしの原点
いつでも笑顔でお客様をお迎えし、「ゆっくりしてね」「コーヒーおかわりしてね」と優しく声をかけてくださいます。もちろん淹れてくれるコーヒーも、豆からコーヒーカップまで和子さんこだわりの品。昔ながらの芳ばしいコーヒーの香りが、心地よい余韻となりお客様を惹きつけます。
「ブレンドコーヒーだけなの」と言いますが、常連客には勝手に「お通し」付き。また、お茶・お湯・水だけでもOKという気軽さです。
→こだわり抜いた豆と和子さんのおもてなしが詰まったメニューをチェック
雑貨は、今でも2ヶ月に1回程度は東京に仕入れに行くという荒田さん。仕入れの交通手段は夜行バスから新幹線に変わりましたが、変わらないセンスと目利き、お客様への愛がそこにはあります。遠野の行事に合わせて店頭でフリーマーケットも開催します。
「私ね、遠野が大好きなの。『勝手に遠野大使』をやってるのよ」と笑顔で語ります。その言葉通り、観光客におすすめスポットを教えたり、時には無料でまちを案内したりすることもあるといいます。そうして、遠くから尋ねてくれたお客様の名刺は増えるばかり。和子さんはその時の心に残った一言をメモしているので、名刺を見るとその方の顔が浮かんで来るそうです。
和子さんが選び抜いた雑貨に囲まれ、香り高いコーヒーを味わうひととき。そして何より、彼女の溢れる遠野愛に満ちたおもてなしの精神が、この喫茶店を四半世紀にわたり支えてきたのでしょう。「お客様も歳を重ね、80代・90代の方々もたくさん来店します。スマホもネットも無縁で、ずっと昔の話で盛り上がる『昭和の寿カフェ』ですね。」と笑顔で話します。
「Cafe & アクセサリー 詩季」は今日も和子さんとお客様のおしゃべりで賑わっています。
その変わらぬ愛と情熱が灯す温かな光は、「勝手に遠野大使」としての活動を通じて、これからも静かに、遠野のまちを照らし続けています。
そんな気ままな遠野の旅を楽しんでみてはいかがでしょうか。
詩季の場所や詳細な営業時間、おすすめメニューについてもぜひご覧ください。
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