そば愛は遠野愛。ばんがり伊藤家の店主が語る、“生きたそば”へのこだわり
釜石生まれ・釜石育ちの店主、阿部勝司さん。
江戸末期の古民家を改装した店「ばんがり伊藤家」で、遠野産の玄そばを自家製粉し、香り高い“生きたそば”を提供しています。
感謝の気持ちを忘れず、一杯一杯に心を込めて。
そんな勝司さんに遠野での出店の経緯とそばへのこだわりを伺いました。
店主・阿部勝司さんは、釜石市で生まれ育ちました。
若い頃から料理の道を志し、高校卒業後は東京・浅草で修行。その後地元釜石市のそばの名店「更科」でも7年半修業したあと、釜石市内でラーメン店を開業しました。平成元年には奥様と3人の息子さんとともに遠野に移住し「重食喫茶ばんがり」をオープン。
2018年には「ばんがり伊藤家」を立ち上げ、現在は地元産の玄そばを自家製粉して提供しています。
海のまち・釜石で育った勝司さんが遠野に来て最初に驚いたのは、畑の広大な風景。
「海で育った自分にとって、遠野の畑の広さは衝撃でした。でも、それよりも衝撃だったのは、遠野の人たちが遠野の畑のように、みんな広い心を持っていることなんですよ」と話します。
その広い心に何度も助けられて、ばんがり伊藤家のそばはできあがりました。
「そばの実を栽培している(農家の)安部純平さんは本当に物知りな人で。あれもこれも安部さんに教わりました。安部さん、遠野のみなさんがいなかったら店はできてないんです。」
勝司さんは「遠野の人の心が広い」と語りますが、常に腰低く、お世話になった方々やお客様への感謝を述べる勝司さんこそ、遠野の広い畑そのもの。そんな温かい心で「地のものをおいしく食べてほしい」という思いから、ばんがり伊藤家のお料理はできています。
ばんがり伊藤家のそばは、遠野産の玄そばを提供する前日に石臼で自家製粉しています。毎日のそばの提供数に限りがあるのは、前日に自家製粉した分だけをお客様に提供しているからです。
「おいしいそばって何ですか?」と聞かれたら、「生きたそばです」と勝司さんは答えます。
「何をおいしいと感じるかは人それぞれだと思うんですけどね、挽きたてのそば、つまり”生きたそば”の中にこそ、本来のおいしさがあるんじゃないかと思うんですよ」
挽きたて・打ちたて・茹でたて――その一瞬に宿る香りとコシこそが、そばの命。
“生きたそば”を味わってもらうため、調理工程だけでなく素材選びにも徹底的にこだわり、ときには畑にも視察に行く勝司さん。
そばだけでなく、お店で提供する新鮮な海の幸や季節の野菜、フルーツジュースもできる限り地元のものにこだわっています。
「目利きはね、うちに元板前の料理人がいるんで。彼がやってくれるんですよ。市場まで行って新鮮なものを選んできてくれます。」
信頼して任せるところは任せる。お店で働く従業員にも感謝の気持ちを忘れないところが勝司さんらしいです。
最後に、お客様へのメッセージをいただきました。
「どんな方でも来てくれるだけで嬉しいです。お客様の期待を裏切らないようにがんばりますので、どうぞよろしくお願いいたします。」
遠野に魅了されて移住したからこそ伝えたい「遠野の魅力」が、おいしい料理と勝司さんの人柄から伝わります。”生きたそば”への情熱と遠野への愛が感じられるお店。ばんがり伊藤家にぜひお立ち寄りください。








