創業は明治時代。時代を超えて愛される「喫茶待月」の店主に聞く
遠野駅からほど近く、どこか懐かしい空気に包まれた喫茶店「喫茶待月」。この場所を守り続けてきたのが、店主の中竹さんです。おだやかで親しみやすい人柄に惹かれ、通い続ける常連さんも多いという喫茶待月。今回は、その歴史と中竹さんご自身について、お話を伺いました。
中竹さんと「喫茶待月」
今回お話を伺った中竹さんは、地元・遠野市にある青笹町のご出身。田んぼと山に囲まれたのどかな地域で育ちました。青笹町は、田園風景の中にたたずむ「荒神神社」がある場所としても知られ、“遠野らしさ”を感じられる場所です。
若いころは市内の会社に勤務していましたが、ご主人との結婚をきっかけに生活が大きく変わります。ご主人の実家が「待月」を営んでおり、ちょうど後継者を探していた時期だったこともあり、「やってみよう」と店を継ぐことを決意。それ以来、訪れる観光客や常連さんを温かく迎え入れながら、変わらぬ笑顔でお店を支え続けています。
料亭時代の面影を今に残して
「待月」のはじまりは、明治時代の料亭にまでさかのぼります。当時の遠野には多くの料亭があり、旅人や商人たちが宴席を楽しむ華やかな文化がありました。「待月」もそのひとつとして創業し、大正時代に撮影されたという写真には、庭園のなかで着物姿の女性たちがくつろぐ様子が残されています。
「今の店舗は、駅前道路の拡張工事のときに現在の場所に移ったんですよ。昔はもっと広くて、今『酒蔵待月』があるところは宴会場だったんです」と話す中竹さん。
昭和35年(1960年)に先代が現在のスタイルで喫茶店をはじめてから、店は形を変えながらも、「待月」という名前と、もてなしの心は受け継がれてきました。
写真提供:喫茶 待月
変わらない味と、変えてきた工夫
「先代のレシピをそのまま大切にしているんですよ」と中竹さんが語るのは、待月の看板メニュー・ナポリタン。門外不出のオリジナルソースを仕込んでつくるこの一皿は、初めて食べてもどこか懐かしく、でもちょっと個性的。「いつもこれを食べに来ます」と話す常連さんも多く、開店当初から変わらぬ味を守り続けています。
一方で、「シン・五右衛門ラーメン」など、新しいメニューの開発にも取り組んでいます。
「昔からのメニューもありますが“シン・五右衛門ラーメン”は新しく開発したメニューなんです。こちらもお客さまに好評いただいています。」
五右衛門ラーメンは、辛味が特徴の遠野市民に親しまれてきたソウルフード。
観光客からも「食べたかった五右衛門ラーメンが、こんなに気軽に食べられて嬉しい!」と、人気メニューになっています。
また「ラーメンのスープは毎日ていねいに取り、チャーシューも手作りしています。岩手産の白金豚を使っているので、やわらかく仕上がるんですよ」と中竹さん。
そのこだわりが詰まった一杯は、ラーメン目当てで訪れるファンも多い、もうひとつの看板メニューです。
喫茶店ならではの楽しみ方
もちろん、喫茶待月では挽きたてのコーヒーも楽しめます。コーヒーのお供には、パフェやあんみつ、ケーキなどのデザートも充実。
「お昼過ぎからは、デザートとコーヒーでひと息つくお客さまも多いですね。クリームソーダも人気があります。お酒のあとに甘いものを食べたくなる方にも、よくご来店いただいています。」
待月のすぐ裏には、姉妹店の「酒蔵待月」があり、そこで食事やお酒を楽しんだあと、喫茶待月に立ち寄ってデザートやコーヒーを楽しむ方も少なくありません。
また、オムライスやピラフなど、昔ながらの“喫茶店らしい”メニューも人気です。
どれも、どこか懐かしく、けれどちゃんと美味しい。そんな安心感のある一品に出会えます。
お客さまへのメッセージ
最後に、中竹さんから皆さまへメッセージをいただきました。
「おひとりでも気軽に来られる雰囲気です。観光の休憩に、ドリンクだけでも大歓迎ですので、ぜひご来店くださいませ。」
レトロな空間で味わう、「喫茶待月」の変わらない味を召し上がれ
創業から100年以上、料亭時代の面影を残しつつ、喫茶店として時代とともに形を変えてきた「喫茶待月」。店主・中竹さんは、先代から受け継いだ味を大切に守りながらも、「シン・五右衛門ラーメン」などの新メニューにも挑戦し続けています。
ナポリタンや手作りのチャーシューが自慢のラーメン、コーヒーと相性ぴったりのデザートまで、幅広い世代に愛されるメニューが揃う喫茶待月。その背景には、中竹さんのあたたかく、誠実な人柄がありました。
旅の途中にふらりと立ち寄っても、どこか懐かしく、ほっと落ち着ける空間。遠野を訪れた際は、ぜひ「喫茶待月」で、味わい深いひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。