なんで遠野でジンギスカン?その魅力に迫る!
1. 遠野ジンギスカンの由来とは?
「ジンギスカン」と聞くと、もしかしたら北海道を思い浮かべるかもしれません。でも、実は東北・岩手県の内陸部にある遠野市も、北海道に負けない、全国でも有数の消費量を誇っているんです!
夏の夕暮れ。火を囲み、鉄鍋の上で羊肉がジュウジュウと音を立てる。香ばしい匂いが立ちのぼり、脂の焼ける音に食欲がかき立てられる。そしてキンキンに冷えたビールをゴクリ。焼きたてのジンギスカンを頬張れば、思わず顔がほころぶ――。
「焼肉といえばジンギスカン」と言うほどジンギスカンが根付いているまち、遠野。ジンギスカンをおいしく味わえる専門店の数も県内最大級で、その独特な食べ方は今や遠野の食文化の代表にもなっています。ホップの産地としても知られている遠野では、地元のビールと合わせておいしくジンギスカンを味わうのもおすすめです。
でも、なぜ遠野でジンギスカン?
どうしてこのまちに、羊肉文化がここまで根づいたのでしょうか。
今回は、そんな遠野ジンギスカンの意外なルーツと、遠野で独自の発展を遂げた「おいしい食べ方」を探っていきましょう。
目次
2.ジンギスカンのまち「遠野」のはじまり
北海道では大正時代から親しまれてきたジンギスカン。実は遠野で羊肉文化が広がりはじめたのは、それより少し後の昭和に入ってからのことです。
この文化の広がりのきっかけとなったのが、現在も市内にお店を構えるジンギスカンの名店「じんぎすかん あんべ」の創業者安部梅吉さんです。第二次世界大戦中、梅吉さんは従軍先の旧満州で羊肉料理に出会い、その独特の美味しさを知ったといいます。帰国後、精肉店兼食堂を開業した梅吉さんは、そのとき食べた羊肉の美味しさを忘れられず、自ら羊肉を取り寄せて、家族で賄い料理として羊肉を食べるようになりました。
あるとき、安部家を訪ねて来た客人に賄いジンギスカンを振る舞ったところ、たいへん喜ばれたため「より多くの人たちに楽しんでいただこう」と、昭和30年頃から店頭にジンギスカンを出しはじめました。
当時、遠野はもちろん日本全国でも羊肉を食べる習慣は珍しく「羊の肉食ってんのか?」と指をさされ笑われたこともあったそうです。それでも、梅吉さんは羊肉と相性の良い自家製のタレを試行錯誤の末に作り上げると、その味がクチコミで評判となり、やがて店には長い行列ができるようになりました。
ところで、現在の遠野市内では馬や牛を見ることはあっても羊を目にする機会はめったにありません。
では当時、梅吉さんはどこから羊肉を取り寄せていたのでしょうか?
実はかつての遠野では、多くの農家がホームスパン(羊毛を染め、手つむぎして織られる織物)用に羊を飼育していました。そのため、羊肉の調達には困らず、冷凍技術もまだ発展していなかった当時でも、おいしいジンギスカンを提供するための環境が整っていたのでした。
もしも遠野に羊がいなければ「ジンギスカンがおいしい」と評判になることはなかったかもしれませんね。
こうしてジンギスカンが根付いた遠野ですが、実は遠野ジンギスカンはその食べ方に北海道とは一線を画す違いがあります。次はそのユニークな遠野スタイルを見てみましょう。
3. バケツの上で焼肉!?遠野ジンギスカン独自の食べ方
これはなんでしょう??鍋?灰皿?一斗缶??
答えは・・・ブリキのバケツです!
遠野のジンギスカンはこの「ブリキのバケツ」で食べる独自のスタイルが定番です。市内の花見や運動会、地元のおまつりなど、人が集まる賑やかなばには必ずと行っていいほど登場する「バケツジンギスカン」。遠野の風物詩ともいえるこのスタイルは、実は暮らしの中から生まれたアイデアでした。
このユニークな「バケツスタイル」を考案したのは、先述の名店「じんぎすかん あんべ」の2代目・安部好雄さん。
四方を山に囲まれた遠野では、昔から高原まつりなどの地域の行事が多く、同店でも鍋や七輪をセットにして山の上まで配達することがよくありました。しかし、当時の山道は自動車もやっと通れるようなガタガタの悪路。車に積んだ七輪が配達中に割れてしまうことも多く、悩みが尽きなかったといいます。
「もっと丈夫で、持ち運びやすいものはないか」――そんな思いから試行錯誤を重ねた末、誕生したのがこの「ジンギスカンバケツ」です。ブリキ製のバケツに吸気口を開け固形燃料を入れ、その上に専用のジンギスカン鍋を乗せるという、シンプルながら合理的なしくみ。火起こしの手間も少なく、どこでもすぐにジンギスカンが楽しめるという画期的なスタイルは、瞬く間に遠野中にひろがりました。加えて、好雄さんがバケツと鍋の貸し出しを無料で始めたことも、普及の大きな後押しになったようです。
今では、スーパーや焼肉店でも当然のように購入ができるジンギスカンバケツ。「遠野のジンギスカン=バケツジンギスカン」というほど定番のスタイルで、道の駅遠野風の丘や遠野ふるさと村、たかむろ水光園などの観光施設でもバケツジンギスカンを楽しむことができ、「遠野のソウルフード」として定着しています。
遠野のジンギスカンは、ただおいしいだけではなく、“地域の特性と暮らしの知恵”から生まれた、遠野らしい食文化なのです。
4. どうやって使うの?バケツジンギスカンの使い方
ここまで読んでいるうちに「バケツジンギスカン、やってみたい!」という方もいらっしゃるのでは?
そんなあなたのために、初めてでも失敗しない「バケツジンギスカンの基本」をご紹介します!
【準備するもの】
- ジンギスカンバケツ
- ジンギスカン鍋
- 固形燃料(250gで約150分燃焼)
- お好きなお肉(もちろんジンギスカン!!)
- 遠野産のおいしい野菜(玉ねぎ、にんじん、ピーマン、キャベツ、しいたけなど)
- チャッカマン/マッチ/ライターなど火をつけるもの
まずは、ブリキのバケツとジンギスカン鍋を市内のホームセンターなどで調達しましょう。BBQコーナー付近を探してみてください。さらにうれしいことに、市内のスーパーでは、ジンギスカン用の肉を購入すれば、鍋とバケツの無料貸し出しサービスがあります。(無料貸出を行っている店舗の一覧はこちら)
つまり、まずはラム肉、野菜、固形燃料の3つを購入するところからはじめればOKです!
準備が整ったら、さっそくバケツに固形燃料をセット。固形燃料に火をつけるだけなので火おこしの手間がかからず、普段のBBQよりお手軽です。あとはジンギスカン鍋をのせて、しばし待機。
鍋がじゅわっと熱くなってきたら、全体に脂をのばしましょう。脂をひいたあと、中央のくぼみにラード(または牛脂)を置いておくのが遠野流。香ばしさと旨味がグッと引き立ちます。
鍋が十分な温度になったら鍋の縁に野菜を敷き詰め、中央部分で肉を焼きましょう。周りに敷き詰めた野菜が滴り落ちた肉の旨味を吸って、おいしくできあがります。
肉が焼けたらジンギスカンのタレにつけて、アツアツのうちにそのままパクっ!
ジンギスカンの香ばしい香り、ジュウジュウという音、そして遠野産のクラフトビール。
自然の中で風を感じながら楽しめば、まさに遠野流・バケツジンギスカンの完成です!
「でも、自分で肉や野菜、鍋を調達するのは面倒…」という方のために、次は手ぶらでジンギスカンを楽しめる場所をご紹介します。
5. 食べるならココ!手ぶらで楽しめるバケツジンギスカンのお店情報
遠野ジンギスカン、食べたくなってきましたか??
そんなあなたのために、遠野でバケツジンギスカンが楽しめる場所をご紹介します!
【手ぶらでOK!観光施設でバケツジンギスカン体験】
食材も道具もすべておまかせ。遠野を訪れたらぜひ立ち寄りたいスポットがこちら。
【道具の無料貸出で楽しむ“セルフ体験派”に】
ジンギスカンを購入すれば、ジンギスカン鍋+バケツを無料貸出してくれるお店があります!
- 笹村精肉店(GoogleMapにリンクします)
- 安部商店
- 羊丸・道
- キクコーストア明神前店(GoogleMapにリンクします)※ジンギスカンを500g以上購入
- キクコーストアとぴあ店(GoogleMapにリンクします)※ジンギスカンを500g以上購入
- キクコーストアバイパス店(GoogleMapにリンクします)※ジンギスカンを500g以上購入
- 遠野食肉センター※ジンギスカンを1000g以上購入
※該当店舗でジンギスカンを購入し、レジにてジンギスカン鍋+バケツを借りたい旨を伝えてください。(GWやお盆などの繁忙期は事前の電話予約がおすすめです。)
【店内でゆっくり味わいたい方へ】
バケツジンギスカンではありませんが、道具も片づけも気にせず、プロの味をゆっくり堪能したい方には、こちらのお店がおすすめです。
【遠方の方にはオンラインショップやふるさと納税も】
遠野ジンギスカンの味を自宅で手軽に味わいたい方には、通販やふるさと納税もおすすめ。
お取り寄せセットで、遠野の味をご家庭でもお楽しみください。
6. おわりに:夏の“旅グルメ”は、遠野で決まり!
ジンギスカンと遠野産クラフトビール、そして緑あふれる里山の風景。
日常を離れて、香ばしい香りとジュウジュウという音、アツアツのおいしさに包まれる贅沢な時間が、ここ遠野にはあります。
今年の夏は、そんな遠野で独自のジンギスカン文化を体験してみませんか?