
岩手県遠野市では、2016年から地域おこし協力隊制度を活用し、起業する意欲のある都市部の方々を受入れ、遠野が長年培ってきた豊かな自然環境や歴史、文化、産業などの地域資源に新たな光を当て地域内外にその魅力を発信してきました。
日本有数の栽培面積を誇る『遠野産ホップ』を活用した「ビールの里づくり」や、『遠野物語』を軸に地域文化を再編集する「to know」といった取り組みは、地域一体となったその取組が多くの共感を呼び、全国から注目される取組に発展しました。
令和7年度は、「ビールの里 次世代ホップ農家」「森と人をつなぐプロジェクト」「遠野ジビエSDGsプロジェクト」「シン一集落一農場プロジェクト」の分野で一緒に挑戦してくれる6名の新たな仲間を募集します。 一緒に新しい持続可能な未来を創造しましょう!!
ピックアップ
記事一覧-
①
ビールの里 次世代ホップ農家 募集人数:3名
【プロジェクト概要】
ビールの味の決め手といわれるホップ。岩手県遠野市は、日本随一のホップ生産地として、60年にわたり栽培を続けてきました。美しい里山の中で高く育つホップのグリーンカーテンや、その収穫風景は遠野の夏の風物詩となっています。
しかし、ホップ栽培農家の減少により、こうした景色も少しずつ失われはじめています。遠野市のホップ生産量及び栽培面積は、ピーク時の6分の1以下に減少しました。
こうした現状を受け、遠野市では「ビールの里構想」を推進しています。日本産ホップの持続可能な生産体制を確立することで地域の活性化を図り、ホップの魅力を最大限に活かしながら、官民一体となって未来のまちづくりに取り組んでいます。
近年、この取り組みが地域に活気をもたらし始めています。毎年8月に開催される「遠野ホップ収穫祭」や、市内のホップ畑や醸造所を巡る「遠野ビアツアーズ」には、全国から多くの参加者が訪れています。
さらに、令和7年には、市内で3箇所目となるクラフトビールの醸造所として、研究機能を備えた新たな拠点「GOOD HOPS」が開設されました。遠野産ホップを使用したクラフトビールづくりに加え、新品種ホップの開発や加工技術の研究にも取り組むことで、新たな産業を創出する存在です。
担い手の育成も着実に進んでいます。現在、市内のホップ生産量の約3分の1は、新規就農者によって支えられています。直近1年では、ホップ農家としての独立を目指して8名が遠野市に移住し、新たな担い手として活動しています。ベテラン農家や若手農家も、技術や経験を惜しみなく伝え、彼らの挑戦を後押ししています。
今回募集する「次世代ホップ農家」は、良質な遠野産ホップの安定供給という面で、ビールの里構想の根幹を支える存在です。ホップの反収及び生産量の拡大、機械や施設の更新、畑の集約などの課題と向き合い、持続可能な生産体制の実現に向けたさまざまな課題にも共に取り組んでいきたいと考えています。
現在、日本産ホップやその生産地である遠野市は、国内外から注目され始めています。私たちは遠野でのホップ生産量をさらに高め、持続可能なホップ栽培を前進させるために、次世代を担うホップ農家を募集しています。ホップ栽培を軸に、一緒に新しい産業をつくり、まちを盛り上げていきましょう。
-
【パートナー】
〇 田村 淳一(株式会社BrewGood 代表取締役)
和歌山県田辺市出身。大学卒業後、株式会社リクルートに入社し、住宅関連の新規事業の立ち上げや法人営業を担当。平成28年に退職し、岩手県遠野市に移住。平成29年に仲間と株式会社遠野醸造を設立し、翌年春にビール醸造所兼レストランを開業。ホップ栽培現場の課題解決や、ホップとビールによるまちづくりの推進、新たな産業創出を目指して、平成30年に株式会社BrewGoodを創業。令和7年にはその新たな拠点として、研究機能を備えた醸造所「GOOD HOPS」を開設。現在、遠野ホップ収穫祭の実行委員長も務めている。
〇村上 敦司(株式会社BrewGood 取締役)
岩手県紫波郡紫波町出身。岩手大学農学部農学研究科修了後、昭和63年にキリンビールに入社。ホップの品種改良に携わり、「一番搾りとれたてホップ生ビール」などを開発する。平成12年にホップの研究で農学博士号を取得し、平成22年には、世界で6人しかいないドイツホップ研究協会の技術アドバイザーに就任。令和2年にキリンビールを退職。現在は、株式会社BrewGood取締役、キリンホールディングス飲料未来研究所技術アドバイザーとして、日本産ホップの研究・振興に携わる。
〇神山 拓郎(株式会社BrewGood ホップ農家、醸造担当)
東京都府中市出身。大学卒業後、健康保険組合で事務職として働く傍ら、平成24年から約9年掛けて日本全国の醸造所や生産者を訪ね歩き、令和2年からは岩手県遠野市でホップ栽培・ビール醸造に従事する。現在は「醸造するホップ農家」として、現場の視点からビールの魅力を発信するとともに、農業の課題解決、若手農家の誘致、持続可能なホップ栽培を目指した仕組みづくりにも取り組んでいる。 -
【求める人物】
・農家としてホップの生産に取り組める方
・ホップの価値を最大限活かした企画やイベントにも取り組める方
・ホップ生産現場の課題解決を一緒に挑戦できる方
※農業の経験は問いません
【ミッション / ロードマップ】
1年目〜2年目:既存農家のもとで栽培技術を学ぶ研修
3年目:研修を進めながら独立に向けた準備
-
-
②
森と人をつなぐプロジェクト 募集人数:1名
【プロジェクト概要】
岩手県遠野市は市の面積の約半分が森林であり、早池峰山を最高峰に周囲を山々に囲まれ、遠野盆地の田畑の風景と相まって、豊かな自然景観を有しています。
私たち人間は、自然循環のなかで生み出される大気や水などの資源を享受し生活しています。しかし、時代の流れのなかで、自然との関係性を意識することなく生活する人が増えている状況は、暮らしが常に自然と共にあり、昔から育まれた知恵や文化が受け継がれている遠野市においても例外ではなく、森林を取り巻く様々な事象が課題となっています。
森林を取り巻く課題としては、木材価格の低迷により山林所有者や市民の森林への関心が薄れていること、加えて林業従事者の高齢化や人手不足により手入れされない森林が拡大し、森林に人手が入らなくなることにより、クマやシカなどの野生動物との緩衝帯が失われ、農作物等への被害が増加していることが挙げられます。また、荒れた森林が増えたことで、森林が有する水源かん養などの機能が低下し、近年多発する集中豪雨に耐えられず下流域での土石流災害の危険性が高まっています。
これら森林環境を取り巻く複雑な課題は、わたしたち市民の生活に直結する課題でもあります。これらは山林所有者や林業に関わる人だけが取り組む課題ではなく、地域及び市民一人一人が関心を持ち、様々な視点で取り組みを行っていく必要があります。
今回募集するプロジェクトでは、持続的な自然と市民の共生に焦点をあて、豊かな森づくりのため市民と共に間伐等の森林保全活動を行います。豊かな森とはどのような森であるのかを市民と共に考え、市民が将来にわたり持続的に森林と関わっていくことができる仕組みを検討し実践していきます。このプロジェクトに参加し、市民と森林をつなぎ、地域を巻き込んだ活動を実践する役割を担ってみませんか。
-
【パートナー】
〇千葉 和
(特定非営利活動法人遠野エコネット 代表理事)
平成3年に遠野へ移住。平成16年に遠野郷の自然を愛する市民有志と共に遠野エコネットを発足。その後、自然環境を守るだけではなく、未利用の資源を活かし、人材育成などにも取り組むことで地域社会に貢献するため、平成22年にNPO法人化。森(自然界)とヒトとの関係を取り戻すことが持続可能な地域の未来につながっていくと考え、様々な活動を展開中。
〇照井 菜々
(特定非営利活動法人遠野エコネット 遠野森のがっこう運営マネージャー)
岩手県遠野市出身。大学で教育を学び、遠野エコネットの子ども向けプログラムに学生ボランティアとして参加。その後、児童館、起業家支援、コミュニティスペース運営を行う団体で勤務したのち、遠野エコネットのスタッフとして遠野森のがっこうの立ち上げに関わり、現職に至っている。
-
【求める人物】
・ 人と自然に関わることに興味があり、将来、林業や森林に関わる事業に取り組みたい方
・森林をテーマにしたプログラムや新たな仕組みの企画・立案とその実践に取り組める方(未経験者でも可)
・地域住民とコミュニケーションをとりながら、課題解決に取り組める方
・地域に暮らす方々の文化や価値観等を理解し、リスペクトできる方【ミッション / ロードマップ】
1年目:遠野森のがっこうを拠点に、遠野市の森林と森林を取り巻く現状を調査し、隊員の興味や適性に応じて、林業・ガイド・インストラクター等の森林や自然体験に関する基本的な知識と技術を習得します。
2年目:1年目の活動を継続しつつ、森林と地域住民との関わりの課題の抽出、新たなプログラムやサービスの開発と実践を行い、将来、自分が生業として取り組むプランを検討します。
3年目:2年目までの活動を発展させながら、自ら考えたプランを実践し、将来継続して活動できる仕組みを確立します。
-
-
③
遠野ジビエSDGsプロジェクト 募集人数:1名
【プロジェクト概要】
岩手県遠野市は四季が織りなす豊かな自然に恵まれた美しい農村です。しかし、近年は、市内全域でニホンジカの個体数が増加し、ニホンジカによる農作物被害が年間1億円に上るほど深刻な状況にあります。遠野市では、鳥獣被害の軽減に向け捕獲を強化し、有害捕獲と狩猟により一年を通じて捕獲活動を行ない、毎年5,000頭以上捕獲しているにも関わらず、個体数の減少には至っていない現状です。
このような状況のなかで、有害鳥獣の駆除を担う猟友会の会員の約6割が70歳以上で高齢化が進んでおり、将来的な担い手の確保が急務であるとともに、捕獲したシカの大部分が十分に活用されないまま廃棄される現状も課題となっています。
毘沙門商会合同会社は、これらの課題を資源循環型の地域創生に転換すべく、遠野市初となるジビエ加工施設を整備し、「遠野ジビエ」のブランド名で令和6年5月に開業しました。捕獲したニホンジカを丁寧に処理・熟成し、食肉・加工品として流通させることで、鳥獣被害対策と地域経済の活性化の両立を目指しています。
今回募集するプロジェクトでは、持続可能なジビエの活用、若手ハンターの育成、商品開発及び販売戦略、ジビエツーリズムの展開など、ジビエを軸に地域課題と向き合い、地域内外とつながりを持ちながら、新たな挑戦と実践で、遠野ジビエSDGsモデルを構築する取り組みに関わっていただきます。
自然と共に生きる暮らし、野生動物と人との持続可能な関係、そして遠野の未来を創る産業の確立に向けて、あなたの力を貸してください。
-
【パートナー】
〇及川 知也(毘沙門商会合同会社 代表社員)
岩手県遠野市出身。地域住民や農家、猟師・猟友会、遠野市のため、鳥獣被害を解決し、持続可能でやりがいのある仕事をしたいと共同代表とともに起業。建設業や製造業での管理者の経験を活かし、人とのコミュニケーションを大切にしながら、毘沙門商会らしい活力と笑顔をもって活動している。
〇及川 真(毘沙門商会合同会社 代表社員)
岩手県遠野市出身。農林水産省での6年の実務経験を経て、15年以上にわたり農業を支える仕事に従事。地域課題に直面し、農業と狩猟の両面から持続可能な仕組みを模索するなかで、遠野ジビエ事業を立ち上げる。鹿肉の利活用を通じて、地域と農を守り、未来へつなぐ新しい地方産業の創出に挑戦している。
-
【求める人物】
・ 普通自動車運転免許を有し、自立的に活動できる方
・狩猟に関心があり、任期中に狩猟免許を取得する意思のある方
・ジビエ(野生動物)を扱う事業に共感し、食肉の解体作業に抵抗がない方
・市内の飲食店や観光事業者と連携し、ジビエの消費拡大やブランドづくりに積極的に関わりたい方
・地域課題に真摯に向き合い、地域コミュニティと協力し解決策を実践できる方
・自ら提案・行動する主体性を持ち、変化や挑戦を楽しめる柔軟性のある方
【ミッション / ロードマップ】
1年目:ジビエ事業の全体像を学びながら、現場での解体、精肉加工の技術習得とジビエツアーの運営サポートを行います。経験を積んだ段階で、企画及び運営に携わっていただきます。
2年目:狩猟免許の取得とジビエの販路拡大に向けた営業活動、SNSを活用したプロモーション活動を行います。
3年目:ジビエ加工品の開発と販売を展開し、市内商店やオンラインでの販路拡大を図り、持続可能な事業の確立を目指します。
-
-
④
シン一集落一農場プロジェクト 募集人数:1名
【プロジェクト概要】
岩手県遠野市宮守町の宮守川上流地区は、平成8年に 182戸の農家がまとまり「一集落一農場」構想を掲げて、宮守川上流生産組合を設立し、約100haの農地で稲作等を行ってきました。また、平成15年には農産物直売所、平成23年には農産加工場とどぶろく製造場を整備し、生産から加工、販売まで一貫した事業体制を整え、運営を行っています。また、近年ではブルーベリー園やわらび園を活用した農業体験や観光など新たな事業を展開しつつあります。
しかし一方で、組合員や地域住民の高齢化により、地域農業を支える人手不足や、大型機械が入りにくい生産性の低い農地の維持保全が大きな課題となっています。このような状況のなか、令和3年に国の指定棚田地域の認定を受け、棚田を核とした地域振興と地域農業の担い手確保の一環として、関係人口を拡大する取り組みに着手しましたが、成果に結びつくところまでに至っていない現状です。
今回募集するプロジェクトでは、新たな視点で地域の現状把握と課題の整理を行い、課題解決に向けて、共に挑んでいきたいと考えています。農業の担い手不足、農地の維持保全、関係人口づくりなど、多くの農村地域が抱える課題に、自身の経験やスキルを生かして一緒に取り組めるパートナーを求めています。将来的には地域組織の運営、コーディネートができる能力を身に付け、私たちと共に持続可能な地域づくりに取り組んで頂きます。
宮守川上流地域の新しい一集落一農場構想(=シン一集落一農場)の実現に向け、一緒に活動してみませんか。-
【パートナー】
〇桶田 陽子(農事組合法人 宮守川上流生産組合 代表理事組合長)
岩手県盛岡市生まれ。大学卒業後、北海道農業改良普及員として8年間勤務。退職後、2年間のJICA海外協力隊員(インドネシア派遣)を経て、平成19年宮守川上流生産組合組合に就職。就職を機に同町に移住。平成23年加工部長として加工事業を立ち上げ、令和6年から現職。
-
【求める人物】
・農業農村、地域課題に関心があり、主体的に取り組む方
・自ら積極的にコミュニケーションをとり、地域住民との関わりを楽しめる方
・野外での労働作業に熱心に取り組む方
・普通自動車運転免許を有し、自立的に活動できる方
・資料作成や情報発信を行うためのスキルがある方【ミッション / ロードマップ】
1年目:過去に受入れた研修生へのアンケート調査の実施
地域住民との交流を通した地域資源や魅力の再確認作業
ホームページや動画作成、SNSでの情報発信。地域での課題解決力の習得
2年目:「棚田funファンクラブ」の活動メニューの充実と関係人口の拡大につながる取り組み
気軽に参加できる農作業のアルバイトの募集や研修重視の体験ツアーなどの企画と実践
3年目:農作業応援や移住につながる関係人口の取り組み強化
地域組織の運営やコーディネート能力の習得
-