遠野で日常的に使われている「お国言葉」をご紹介します。ぜひ声に出して、その響きのあたたかさを味わってみてください。
遠野で肉を食べると言ったらジンギスカンのことだ、
人が集まったらジンギスカン、イベントの締め、スポーツの後にもジンギスカンなのである。
「美味しいからね、遠野にきたら是非食べてみてね!」
「んめがら、遠野さきたらぜってくってみでや!」と、遠野人は言うでしょうが、初心者のあなただったら
「美味しいから、遠野にきたらぜってくってみてね!」・・・・と、
現代語の中に上手に二三割混ぜて、ぜってつかってみでや。
ジンギスカン屋にみんなが集まってきました、
「なんたら、ケンズおしぇな?」牛の世話が終わってから駆けつけたタイチが言った。
「おしぇな」は、もちろん「遅いなぁ」だね、
「遠野時間が!」ササキも嘆く。30分はあたりまえ、集合時間を守らないのも遠野の特徴だ!
「東京の学校さいってでがらぬ、まだ時間もまもれねのが!」
「いってでがらぬ」というのは「行ってるくせに」だよ。
「いんだいんだ、はずめっぺ、しゅやぐのあねさんいんだがらよ、やっぺ!」ササキは早く飲みたいのだ
「はずめっぺ」は「はじめようぜ」だね、「いんだがらよ」は「居るんだからさぁ」で、
はじめの「いいじゃん」の「いんだ」とは違うから、ちゃんと使い分けてね!「やっぺ」は、もう分かってるよね?
「おいしそうね!食べましょう!」彼女も、もう我慢が出来ないのだ
いい音を立てて肉が焼けてきた「けー、けー」
別に鳥が鳴いているわけではない「食べろ、食べろ」と、言ってるのだ
「でも、羊肉って臭くないの?」彼女はまだ不安だ。
「くせってが、ほったなごどねべよ、タイズかまってみろ!」ササキがタイチに言った。
「臭いって?そんなことないだろうよ、タイチ、臭いをかいでみな!」だ、
この「かまってみろ」も、良く使うからね。「すかしっぺ」をしたときは気をつけようね。
「おれはこんしゅう、さんかいめだがらな、くせもくさぐねもわがんねなぁは」タイチもタフだ
「なんともねじぇ、まんつうんめがらはぐけ!」、
ササキはこういったのです「大丈夫だ、とにかくうまいから早く食べろ!」
「はぐけ!」の「はぐ」は「吐く」じゃないからね、吐くのはまだ早いよ、の「早く」だからね、
「あー、うま、ちょーうま、うける!」どうやら、食べれるらしい。
「馬でねぞ、ジンギスカンだ!がはは」 いい音と、煙で食は進む
「じゃ、ぺっこゆぷてな、しーよわめねが?」目をしょぼしょぼさせてタイチが言った、「ぺっこ」はいいね?
「ゆぷてな」は煙が目に染みる・・・「煙い」のことだから、千葉の焼肉食べ放題でも使えるね
「しー」は「火」、江戸っ子みたいだね!「よわめねが」は「弱くしないかい?」だ
遠野では、火を使っているときに、決まった人にだけ煙がいったりすると
「いいおどごのほさけむりはいぐもんだ」といいます。
「いい男の方向に煙がいくもんだよ」だからね、ゆぷてどぎは、素直に喜ぼうね、
「あねさん、遠野のビールものめ!」
御存じ、遠野はホップの生産日本一でござんす。
1955年遠野市生まれ、千葉県在住のガーデンデザイナー・グリーンコーディネーター。本業の傍らイラストレーターとしても活動、遠野のイラストマップ、双六、カルタなども旅の蔵にて販売している。
本業のガーデニングの本、農文協の「きんや先生の園芸教室・はじめての寄せ植え」や旅と思索社「二十世紀酒場1,2」などがある。