遠野語講座

第11回 おしょすなや

遠野で日常的に使われている「お国言葉」をご紹介します。ぜひ声に出して、その響きのあたたかさを味わってみてください。

遠野語講座

カッパ淵に腰まで浸かってしまったが、彼は座ったままでなかなか出ようとしない
観光客は橋の上から面白がってケータイで写真を撮っている、
その時「おー、ケンズなぬすてら、すずすそんて(涼しそうで)いーな」友人のササキがやってきた
「おー、あんまりあっつがらみずあびすてだどごだ」
自分の恥ずかしいところを決して認めず、失敗しても謝らないのが遠野人の特徴だ。
「どーせおだずってでおづだだげだんべ、ぶまだじぇなや、ハハハ、はぐあがってこ」
「おだずって」は「はしゃいでいて」だね、そのあと、濁音の多い言葉が続く、トーホグ語の特徴だね!
「ぶまだじぇなや」の「ぶま」は「どじだねー」だから、ま、「ぶざまだねー」ということなんだろうね。
それから「はぐあがってこ」は「はやく上にあがってこいよ」ということだよ。
「すかだねな、あがってやっか」 まだ、格好つけてるのである、困ったもんだ。
「きげあっか?」ササキが気を利かせていった「着替え持ってんのか?」ということだよ。
「あるわげねがべよ、ずぎぬかわぐがらいー」
この「あるわげねべよ」の「べよ」も遠野人が意思表示する大切な言葉だから覚えようね
会話の最後に・・・・じゃん!なんて言う時は格好つけて「・・・べよ」といってみよう!
「六本木に行くって言ったじゃん」ってなシチュエーションだね
でもこのときは「・・・いぐって言ったぺよ」と「べ」が「ぺ」になるから言って甘えれるといいべなぁ。
さらに「いっぺくっぺっていったっぺよ」(たくさん食べようって言ったじゃん)なんて言えたら最高だね
「づぎぬかわぐ」は「すぐ乾く」だからね、
最後の「い」は「いいんだよ」の略だからね、短くて便利でしょ。
「おれ、しゃっつもってらがらよ、かすが?」、「しゃっつ」はもちろんシャツだよ。
「Tシャツ持ってるけど、貸そうか?」、ササキも親切を押し売りするのだ、このタイプも遠野には多い
「あほが、おめのしゃっつなんか、おしょすくてきてられねじぇ!」
「ばーか、お前のTシャツなんか恥ずかしくて着れるわけねーだろ」
この「おしょす」も、遠野人としてちゃんと使えなかったらおしょすがらね!「はずかしいー」だよ、
第一回の講義から出ているけど覚えてる?
タメクチでいいときは「しょす」でいいけど
遠野の女の子だったら「あやー、おら、おしょすー」くらいは言って欲しいね
女の子も「おら」でいいんだよ!
濡れたままでいるのと、ダサいシャツ着てるのとどっちがおしょすのか、そろそろ考えようねケンジくん!
「あはは、まんてカッパだ」ずぶぬれのケンジをササキくんが見ていった「まんて」は「まるで」だよ
「ほんとだ、カッパだ ハハハ」彼女も意見が合ったようだ
「やがますこの・・・・・ふわ・わ・わ あっくしぇん!」「やがますこの」は「うるせー」だね
カッパ淵の水は冷たいのだ、くしゃみがでた「はっくしょん」が「あくしぇん」だよ
「あくしぇん、あくしぇん! 風邪ひぐなよー」

[[[ 多田きんや プロフィール ]]]

1955年遠野市生まれ、千葉県在住のガーデンデザイナー・グリーンコーディネーター。本業の傍らイラストレーターとしても活動、遠野のイラストマップ、双六、カルタなども旅の蔵にて販売している。
本業のガーデニングの本、農文協の「きんや先生の園芸教室・はじめての寄せ植え」や旅と思索社「二十世紀酒場1,2」などがある。