遠野語講座

第八回 てあます

遠野で日常的に使われている「お国言葉」をご紹介します。ぜひ声に出して、その響きのあたたかさを味わってみてください。

遠野語講座

牛乳をご馳走になっていたら、家の方から小さな子供がやってきた
「おらえのぺっこだ」、また「ぺっこ」がでてきた。
この場合は、兄弟なんかがいて、下の子供という事だ
「あなたの子供なの?私と同い年だよね、マジ?お父さんなの?」
「んだ、これはいまのどごろばっつ、うえはいづっつだ」
「そうだよ、この子は今のところは末っ子、上には五歳の子がいるんだ」、早いヤツは早い、まだ21歳だ。
「ばっつ」は末っ子のことで「汚い」の「ばっつ」ではないから注意してね
(筆者の御幼少の頃のように、洟を垂らした末っ子は「ばっつばっつ」・・・・・?  哀しい)
「この子、ちょーかわいい」やはり彼女もこっこべごより、人の子供がかわいいらしい
赤ちゃんは「あがんぼ」、もう少し大きくなると「ぼっこ」、やがて「わらす」に成長する
はじめ「めんけくてぺっこなあがんぼ」も、成長して、言う事をきかなくなってくると「しぇわすぼっこ」になり
さらに「くされわらす」から「くそがぎ」と、呼ばれるようになるのだ・・・・コメントはさけます
人のいう事を聞かない、手に負えないものを「てあます」と言うが
この「てあます」は大人になっても、何歳になっても、ついてまわる場合があるので気をつけよう。
今の子は洟など垂らさず、みんなきれいでかわいい
バッグの中にお菓子があったのを思い出したので、この子にあげようと彼女は思った。
「ぼうや、このキットカット食べない?どうぞ」
(メーカーさんごめんなさい、フィクションです)
これじゃだめなんだな遠野人は
「ほれ、ぺっけぼっこ、きっとかっとけっ!」こういきたいね、
リズム感のある会話になるけど、大丈夫かな?
ま、親戚の子供あたりから試したほうがいいね、いきなりは危険だよ!
一発で通じなかったら、やめようね繰り返しちゃだめだよ
「なんたらまんつ、おもさげねな、ほれごっつおさんは?」
無理やり若いオヤジは頭を下げさせるのだった、遠野の人は礼儀正しいのだ。
「おやおや、申し訳ないね、ごちそうさまはどうしたの?」と、いうことだよ
「んで、そろそろあえづのどごさおぐってってやっか?ごしぇやいでらころだべ」
「あいつもだいぶ怒ってるころだろうから、送っていくよ。」と言っているのだ。
「ん、ありがと、ごちそうさま」ということで、送ってもらうことになりました
めでたしめでたし・・・あーまづがった「どんどはれ」だった
とはいっても、さらに講義は続きます。

[[[ 多田きんや プロフィール ]]]

1955年遠野市生まれ、千葉県在住のガーデンデザイナー・グリーンコーディネーター。本業の傍らイラストレーターとしても活動、遠野のイラストマップ、双六、カルタなども旅の蔵にて販売している。
本業のガーデニングの本、農文協の「きんや先生の園芸教室・はじめての寄せ植え」や旅と思索社「二十世紀酒場1,2」などがある。