遠野で日常的に使われている「お国言葉」をご紹介します。ぜひ声に出して、その響きのあたたかさを味わってみてください。
久し振りに会った友人が店に行こうというので喫茶店かな?と思っていたら
行きつけの飲み屋だった。
「へるべ!」彼が言った。
つまり、「この店に入ろうぜ!」の略である
「まんつ、ねまってよ、のむべ」相当の飲兵衛である彼は、昼から飲む理由が欲しかったのか・・・!
この場合の「まんつ」は「まあ、とりあえず」くらいの軽い意味
「ねまってよ、のむべ」は「せっかくだからよ、座ってさ、酒でも飲もうぜ!」という意味だ
ちなみに、座敷に座る場合が「ねまって」で、テーブル席のイスに座るときは「まんつ、かげろじゃ」を使う
「まんつ」と「じゃ」の使い方はもう大丈夫かな?「じゃ」は後ろに付いてもいろいろ使われるから注意してね!
なかなか彼が戸惑って座らないときは「なんたら、じゃー、ちゃっちゃどねまれじゃ」という風に
「じゃー」も強制の意味を強めてくるので、早めにねまろう。
(「ちゃっちゃど」は重要な言葉なので、また後で)
こういった強引な東北人は、酒や料理の美味しさも強制してくるので注意が必要だ
「んめなぁ、な?んめべ?んだべ、いがったいがった」 外国か!
「うまいなぁ、なぁ?うまいだろう?そうだろう?よかったよかった」と、ひとりで質問して答えを出し
さらに自己満足まで持っていく、これが遠野人、特に酔っ払いの遠野人の特徴だ。
そのうち酔いもかなりまわって、コップを倒すようになる
「じゃ、まがすた」つまり「倒してこぼした」という意味
とっさの場合に出てくるこの「まがすた」や後で出てくる「しゃっけ」「たまげだ」「おっかね」などが
自然に出てくるようになればしめたもので、立派な遠野人だ
「もう帰ろうぜ!」
「あぁー?けっかは?そが?けるのが?んで、けっぺ」そうとう、彼も酔いが回ったみたいだ
「アー、なに、もう帰るのか?そうか、帰るんだ、そうか、しゃーねーな、帰ろうか?」という事なので
さっそく、錦糸町の居酒屋から帰るときに使ってみよう、酔っ払ってからこれが使えたらたいしたもんだ!
「んで、けるべ」
1955年遠野市生まれ、千葉県在住のガーデンデザイナー・グリーンコーディネーター。本業の傍らイラストレーターとしても活動、遠野のイラストマップ、双六、カルタなども旅の蔵にて販売している。
本業のガーデニングの本、農文協の「きんや先生の園芸教室・はじめての寄せ植え」や旅と思索社「二十世紀酒場1,2」などがある。